日本の昔話 「わらしべ長者」
ものがたり
昔あるところに、与作というとても貧しい若者がいました。

与作には田圃も畑もないので、あちらこちらの村に出掛けては人手の足りないお百姓さんの畑仕事を手伝い、わずかな芋や野菜をもらって暮らしていました。

勿論、住む家もないので、村外れのお堂で寝泊りしています。

夕方になり仕事を終えた与作は観音堂に戻って来ました。

「観音様、今日も一生懸命に無事に働いてきました。 私には帰る家がありません。 今夜も泊めて下さい。」

与作は観音様に両手を合わせました。

「観音様、明日も仕事にありつけるよう、お願いします。」

疲れきった与作が、グウグウと寝込むと。

「与作や目を覚ましなさい。」

その声に目を覚ました与作は、目をこすってビックリしてしまいました。
なんと、枕元に金色の光に包まれた観音様が立っていたのです。

「与作や、お前は感心な男じゃ。 どんなに貧しくとも、わずかな礼で不平も言わず、人の手助けをしているではないか。」
「そのために、未だに家もなければ、お嫁さんももらえない。 私がお前に幸せを授けよう。
明日、初めに手にした物を放さず大事にするのじゃ。」

与作は思わず手を合わせお礼を言うと観音様のお姿は消えてしまいました。

翌朝、目を覚ました与作は喜んでお堂を後にしました。
お堂の階段を、トン ! トン ! 降りて来た時、ウワッ ! 道端の石につまずいて転んでしまいました。

「痛てててっ ! 」

与作が立ち上がると、いつの間にか一本のわらしべを握っています。

「観音様がおっしゃった今日初めて手のした物とはこのことか ? とにかく大切にしよう。」
「しかし、こんなわらしべがどうやって私を幸せにしてくれるのだろう ? 」

与作はわらしべをしげしげと見つめながら歩いていると、『ブゥーン ! ブゥーン ! 』と一匹のアブが飛んで来て、与作の顔の周りを飛び回ります。

与作はアブを捕まえると、持っていたわらしべの先に結び付けました。

・・・・・次号 (その2) へ続く
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