ものがたり (その3)
「こわれ易い壺を曲がり角で売るなんて・・・。

今度は、お城の台所で働くんだ。」

口答えも出来ず、お姫様はお城で働き始めました。

重い鍋を火にかけたり、お皿を洗ったり、毎日山の

様に仕事があります。
お姫様は腰の両側に壺を吊るしました。

その壺にコック達がくれたご馳走の残り物を入れ

て、家に持って帰るのです。

「良くやっている様だな。」

ギター弾きにほめられて、お姫様は嬉しくなりました。
ある日、お城の若い王様の結婚を祝うパーティーが

開かれることになりました。

お姫様はくたくたになるまで働きました。

美しい大広間に次々とお客が入って来ます。
お姫様は扉の影から見とれていました。

「私はわがままだから、もうパーティーにも出られ

ないのね・・・。」

粗末な身なりのお姫様のそばを通りかかる度に、

召使達はそっとご馳走の残りを壺に入れてくれました。
その時誰かが近づいて、お姫様の手を取りました。

「綺麗な娘さん。私と踊って下さい。」

立派な服を着た、若い王様です。

その顔を見て、お姫様は真っ青になりました。

あの『三日月王』だったのです。
「手を離して下さい・・・。」

慌ててお姫様は逃げ様としました。

王様を馬鹿にした自分が、みすぼらしい姿でいる

のが恥ずかしかったのです。

けれども王様はお姫様の手を離さず、大広間に

引っ張って行きました。
・・・・・次号 (その4) へ続く
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