日本の昔話 「鴨とり権兵衛(カモトリゴンベエ)
ものがたり

昔あるところに、鴨を取って暮らしをしている権兵衛さんという男がいました。

権兵衛さんは、毎日沼に行っては、鴨を撃ちます。

沼には鴨が一杯いますが、ズドーン ! と権兵衛さんが鉄砲を撃つと、みんな逃げていってしまいます。

ですから権兵衛さんは、いつも一羽きりしか、鴨を捕まえられません。

ある時、権兵衛さんは考えました。

「一羽ばっかり鴨を取っていても、きりがない。一度に百羽の鴨を捕まえる方法はないものか・・・・・」

やがて権兵衛さんは、お酒をしみ込ませた餌を用意しました。

そしてその餌を、鴨のいる沼に撒いて来たのです。

寒い寒い日のことでした。
さて、その翌朝、未だ夜も明けきれないうちに、権兵衛さんは沼へ出かけて行きました。

餌を食べた鴨達は、酔っ払ったのか、すっかり眠りこけていました。

しかも、寒さに池が凍りつき、鴨達も氷の中に閉じ込められています。

権兵衛さんは喜び勇んで、鴨を紐で縛っていきました。
やがて日が昇って来て、氷が溶け始めました。

「しめしめ。」

権兵衛さんが紐を手繰り寄せたその時です。鴨がいっせいに目を覚まし、バタバタと飛び立ちました。

「うわっ、どうしよう ! 」

権兵衛さんは、必死で紐を引っ張りましたが、相手は百羽もの鴨です。 あっという間に、権兵衛さんは、空高く舞い上がって行きました。

鴨は、権兵衛さんをぶら下げたまま、ずんずん空へ昇って行きます。

そして、とうとう雲の上に出てしまいました。

すると、雷様が権兵衛さんに向かって稲光を走らせて来たから大変です。

ピカーッ、ゴロゴロ !

つかんでいた紐が切れて、権兵衛さんは真下さまに落ちて行きました。

・・・・・次号 (その2)へ続く
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